白内障
白内障は昔「しろそこひ」と呼ばれ、高齢者の視力障害の主な原因でした。今では手術による治療が進歩し、白内障で低下した視力は、再び取り戻すことができるようになってきました。私たちは、近くを見たい時には近くに、遠い所を見る時には遠い所に、きちんとピントを合わせることができます。これは水晶体の働きによります。水晶体は眼球に入ってきた光を屈折させ、自らの厚さを変化させることで、ピントを合わせています。何らかの原因によってこの水晶体に濁りの生じる病気が白内障です。
水晶体は薄い袋に包まれていて、前側の膜を前嚢、後側の膜を後嚢と言い、中を満たしている のはたんぱく質でできている皮質で、中央部分に核があります。加齢による白内障の場合、水晶体の周辺部(皮質)から濁り始め、進行するにつれて濁りが中央 部分(核)にまで広がってくると、目がかすむ、細かい字が読みにくい、濁った皮質に光が乱反射して、明るい所でまぶしさを感じるなどの症状が現れます。
~白内障とは~
目の前から入ってきた光は、角膜、水晶体を通って網膜に像を結ぶ。水晶体は凸レンズ形の透明な組織で光をよく通す。
水晶体が濁ってくると光がよく通らなくなり網膜に鮮明な像を結べなくなる。その結果、目のかすみや視力低下などの症状が現れる。
白内障の種類
【加齢に伴って起こる】
白内障の大部分が加齢に伴い起こる「老人性白内障」で、60才代の発症率が高くなり75才以上では90%を超える人に水晶体の濁りが生じます。
【先天性】
生まれつき水晶体が濁っている場合や、妊娠中に母親が風疹に感染した場合に起こることがあります。
【糖尿病/アトピー性皮膚炎】
糖尿病、アトピー性皮膚炎の合併症として若い人に起こることもあります。
【薬物の副作用】
ステロイド(副腎皮質ホルモン)薬を長期間内服あるいは点眼することによって副作用のため起こることもあります。
【外傷性】
目をぶつけたり、目に異物が入ったりといった、目のケガが原因で起こることもあります。
検査
【眼底検査】
散瞳薬という瞳を広げる点眼薬を用いて行う検査で、網膜を調べてほかに目の病気があるかどうか確認します。
【細隙灯顕微鏡検査】
特殊な顕微鏡を使って角膜や水晶体の状態を調べる検査で白内障が起きているかどうか、また水晶体のどの部分に濁りがあるか調べます。
治療
【薬物療法】
点眼薬(ピレノキシン、グルタチオン)や内服薬(チオプロニン、パロチンなど)がありますが、水晶体の混濁の進行の防止または遅延を目的で使用され、水晶体の濁りを消すことはできません。したがって症状があまりひどくない段階から始めるのが理想的です。
【手術療法】
(1) 手術を受けるタイミング
白内障の手術は決して手後れということはありません。症状が進んで日常生活が不便になった時に受ければよいでしょう。ただし、どの程度視力が落ちると不便を 感じるかは、患者さんのライフスタイルによっても異なります。例えば、自動車の運転免許の更新には0.7以上の視力が必要ですが、運転しない人ならそれ以 下でも支障はありません。一般的には、視力が0.5以下になった時が目安とされています。視力が0.5あれば、新聞の小さな字が読めます。
(2) 手術方法
濁った水晶体を取り出し、代わりに人工の「眼内レンズ」を入れる手術が右図の要領で行われます。手術は安全性が高く、手術時間もごく短時間で済みます。また最 近では麻酔技術が進み痛みもなく切開範囲もごく小さいので、患者さんにとって身体的な負担の少ない手術です。手術後は、経過を見たり検査を受けるためにも 3~4日ほどの入院が必要ですが、安静を保つ必要がほとんどなく、最近は日帰り手術も行われるようになっています。
手術の方法
◉ 前嚢を切り取る
角膜にそって3mmほど切開し、前嚢を切り取る。チン小帯と後嚢は残す。
水晶体の皮質と核を超音波で砕き、中身を取り出す。
◉ 眼内レンズを挿入する
切開部から、折り畳んだ眼内レンズを挿入し、後嚢の中に固定する。
予防
抗酸化作用のあるビタミンCを豊富に含む野菜や果物を毎日の食事でしっかり摂るようにすると良いでしょう。
日ざしの強い時には、紫外線を避けるために、帽子をかぶったり紫外線カットレンズのサングラスなどをかけましょう。
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